REDD+

REDD+(森林保全事業)とは

REDD+ とは、 途上国における森林減少・森林劣化からの排出の削減および森林保全、持続可能な森林経営、森林炭素蓄積の強化を行う活動のことです。正式名称は、Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countriesです。

今、世界の温室効果ガスの排出量の約16%は森林減少・森林劣化による炭素ストックの排出に由来しています。 逆に言えば、森林を守り保全することで、その温室効果ガスの排出を抑えることができます。 また、森林は大気中のCO2を吸収し炭素を蓄積し、温室効果ガスを削減することができるため、 地球温暖化対策として大変効果的です。

現在、ワイエルフォレストは、南スマトラ州オーガン・コムリン・イリル県(以下、OKI県)の沿岸域保護林でREDD+事業を展開しています。 この現場は2006年より干潟での新規植林を実施していた内陸側にあるため、 共に働く現地住民は同じメンバーで、地元コミュニティとの関係構築・連携が出来上がっています。

保護林における環境サービス利用事業許可

インドネシアでREDD+事業を実施するために、2013年7月に「保護林における環境サービス利用事業許可(IUPJL-HL)」を取得しました。
このIUPJL-HLの取得は、インドネシア国内において初めてのことです。事業許可の期間は30年間で、その後に延長することも可能です。
インドネシア国内の林業許可は、インドネシア国籍の企業・団体のみ取得が許されているため、 以前より付き合いのあるインドネシア企業のPT. Tiara Asia Permaiと共同事業契約を締結し、 IUPJL-HLを取得しました。
REDD+事業はPT.Tiara Asia Permaiとワイエルフォレストが共同で実施しています。

経済産業省のREDD+ FS業務受託

平成23年度より4年間、REDD+事業の実現可能性調査(FS)業務を、経済産業省 産業技術環境局 地球環境連携・技術室より受託し、REDD+事業実装に向けた取り組みを行っています。

  • 平成23年度 地球温暖化問題等対策調査(非エネルギー起源温室効果ガス関連地球温暖化対策技術普及等促進事業)
  • 平成24年度 途上国における適応対策への我が国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査事業
  • 平成25年度 途上国における森林の減少・劣化の防止等への我が国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査事業
  • 平成26年度 途上国における森林の減少・劣化の防止等への我が国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査事業

OKI-REDD+事業の実施

インドネシア共和国南スマトラ州OKI県にて実施しているREDD+事業を、OKI-REDD+事業と称しています。
2013年7月の事業許可取得後から準備期間を経て、2016年8月より事業を開始しました。
OKI-REDD+事業は、2016年から2045年の30年間継続して実施します。

■事業継続の意向
私たちは、本OKI-REDD+事業を2016年から2045年までの30年間継続して実施することに対して強くコミットしています。

■事業概要

期間2016年~2045年(30年間)
場所インドネシア共和国南スマトラ州オーガン・コムリン・イリール県
土地沿岸域に位置する保護林。1986年に林業大臣により保護林に制定された。
面積許可取得面積: 23,500ha
距離/幅海岸線距離:約50km / 面積幅:約2.5~15km
自然状況65%のエリアで森林減少及び劣化
構成樹種マングローブ林及び内陸性熱帯林
ドライバー養殖池の開発による違法伐採、森林火災、水文学変化による植生の自然荒廃
村落保護林に制定される以前より、村落形成・住民生活があり、海洋での漁業により生計を立てている。
活動内容REDD分野 違法な森林伐採・火災防止のためのパトロール
植林分野  裸地・荒廃地での植林活動(マングローブ・ジェルトン)
水文学回復のための土砂撤去
養殖池跡地のシルボフィッシャリーの導入
活動体制ベースキャンプを設置し、専属スタッフが常駐。
地元住民の組織化、研修・技術移転を行い、住民参加型で活動実施。
住民へのインセンティブ・作業活動に参加する事による現金収入
・森林回復に伴う海洋自然の拡充・漁獲量向上
・シルボフィッシャリーによる持続可能な水産養殖経営
・ジェルトンの樹液の収穫・販売
・コミュニティ開発活動の支援

■事業内容
OKI-REDD+事業では、様々な活動があり、それぞれの活動は相互に関連しています。地域住民を参画を促進し、地域住民もインセンティブが享受できる方法で事業を実施しています。

A.看板設置
事業とエリアを周知するために、地域の主要交通路や境界線に周知のための看板を設置する。看板の設置・交換作業は、3年に一度実施する。

B.森林パトロール
違法伐採や森林火災などの防止・抑制のために、専属のパトロール隊が事業エリアのパトロールを実施する。2016年~2020年までの州行政の指示の元、森林火災リスクが高くなる乾季のパトロールを実施指定していたが、2021年からは通年のパトロールを実施します。パトロールは、事業期間の30年間実施します。

C.衛星画像とドローンによる監視
OKI-REDD+事業エリアは、マングローブ林などアクセスが難しい森林が存在し、パトロール隊が到達できないエリアにおいては、衛星画像やドローンを使用した監視を行います。

D.監視塔の設置
監視塔を設置し、地上からは目視しにくいエリアを、高い位置から監視することができます。

E.消火活動
専属の消火隊を組織し、キャパビルを行っています。森林火災が発生した際に、即座に対応できる準備を行っています。

F.ベースキャンプと専属スタッフの配備
OKI-REDD+事業の拠点となるSungai Batang村にベースキャンプを設置し、専属のスタッフが常駐しています。ベースキャンプ及び専属スタッフが、Sungai Batang村との連携の窓口になっています。

G.水文学回復
OKI-RED+事業エリア内に、外部事業者が過去に水路を造成し、土砂を積み上げたことが原因で、水文学が遮断されて、植生の荒廃に繋がっているエリアがあります。そのエリアにおいて、自然の水文学を回復するために、土砂の撤去作業を行います。

H.マングローブ植林
事業エリア内には、違法な養殖池の開発や違法伐採により、裸地になっている場所が4,557haあります。2022年から、10年間かけて毎年455haずつマングローブの植林を実施します。また、活着率が低い場所や枯死した場所では、植林の翌年に補植を実施します。

I.シルボフィッシャリーの導入
マングローブ植林エリア4,557haの中で、違法開発の養殖池跡地230haにおいて、シルボフィッシャリーの導入を行います。2022年から実施する年間のマングローブ植林445ha中の23haでシルボフィッシャリーを導入し、10年間かけて実施します。
また、シルボフィッシャリーエリアのマングローブ植林が完了して3年後には、魚やエビの水産物の養殖を開始する計画です。

J.ジェルトン植林
事業エリア内には、草地のエリアが4,998haあります。2022年から、10年間かけて毎年499haずつジェルトンの植林を実施します。また、活着率が低い場所や枯死した場所では、植林の翌年に補植を実施します。

K.地域住民の参画とキャパシティビルディング
OKI-REDD+事業では、地域住民に参画して頂き事業活動を行っていきます。Sungai Batang村の村組合組織と合意を形成し、作業活動においては契約を交わし実施しています。住民の作業チームの編成や、オンザジョブトレーニングによる技術移転やトレーニングを実施し、必要な場合にはセミナーや研修ツアーを実施しています。

L.持続可能な村林経営
OKI-REDD+事業は、OKI-REDD+事業エリアは保護林であり木材の採集は法律で禁止されていますが、Sungai Batang村住民が家屋や漁具など日常生活において木材需要があることを認識しています。Sungai Batang村が合法的に木材を入手するための村林を設置し、木材の採集後には再植林するサイクルを繰り返し、持続可能な村林の経営を支援します。

M.非木材林産物の活用
OKI-REDD+エリアは保護林であるため、木材の採集は法律で禁止されていますが、木材以外の例えば果実などは、禁止されていません。そのため果実を含めた副産物の活用の研修や技術移転を行い、住民の副収入の創出を支援し、生計向上に貢献します。非木材林産物の販売には許可が必要であるため、それらの手続きも行います。

N.村の公共サービス支援
ベースキャンプの一角を村の保育園用地として提供し、保育士の報酬のサポートも行っています。また、小学校での環境教育、家庭農園やブラスチックゴミの再利用などの技術支援、娯楽設備の提供など、村の公共サービス支援を行っています。

O.モニタリング
各活動に応じて、適切なタイミングでモニタリングを実施します。

■資金計画
OKI-REDD+事業を継続するための資金調達には、カーボンクレジットによる収入が必要であり、現在VCS登録に向けて準備を行っています。
2021年度中のVCS登録完了と、その後VCSカーボンクレジットの創出を目指しています。
VCSカーボンクレジット創出までの必要事業資金は既に自己資金及び投資等により確保が完了しています。また、2016年から2045年までの30年間の事業資金については、VCSカーボンクレジットの販売による収入で十分な調達ができる目処が立っています。

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